障害者差別の禁止と合理的配慮を受ける権利について

28年4月、障害者差別を禁止し、職場で合理的配慮を受ける権利が認められ法律が施行された。

これが他の差別禁止、例えば男女差別禁止と違うのは、単に差別してはだめというのではなく、具体的に合理的配慮という行動を求めており、その配慮を受ける権利を障害者に認めたことである。

みなさんの職場でも人事部等から会社の社内規定で、上司は部下から申出があれば相談を受けて必要な配慮をしなければ社内処分もありうる、というようなものが公表されたのではないだろか。

発達障害については、(発達障害も含む)ということで明示されたものの、では発達障害とは何かについての定義、意義は決まっていない。法律上、権利が認められたにも関わらず、権利主体である発達障害について曖昧なままである。障害者手帳がなくてもいいことは明確になっているが、ではある一人の医師が合理的配慮が必要だと診断書を書けば合理的配慮を受ける権利を有するのかは疑問だ。会社に産業医がいて、診断書をもっていってもあなたは発達障害ではないといったり、別の大人の発達障害の診断ができるA医師の診断書をもってきてからしろ、とかいいかねない。

加えて、マイナンバーや運転免許更新時等の精神障害の申告など、精神、発達を疑う当事者が精神科に行くことは、本人はもとより家族からも反対され、治療が遅れている人がいる現状で、医師の診断書がなければ、その発達障害者が、合理的配慮を受ける権利を享受できないというには、法律の立法趣旨に反するであろう。


さらに驚くべきことは、法律上の権利でありなら、その権利は裁判所により担保されていないということである。
基本的人権の尊重を目的とする憲法は、法律が正しく運営されない場合を想定して、人権の最後の砦として違憲立法審査権を定め、最高裁を最終的に国民の権利を守る機関にした。


ところが、なんとしたことか、この合理的配慮を受ける権利は裁判の対象外とされている。言い訳としては、裁判はお金も時間もかかるので、障害者の権利を守るのに現実的でないというのだ。そこに障害者は健常者と違って、お金も時間もないということ自体が障害者差別じゃないかとも思うが、そうでないとしても、裁判所は損害賠償請求だったら受けられるが、合理的配慮を受ける権利で訴えられて、裁判所はじゃあ会社はこうこうこうゆう合理的配慮をしてください、との判決はできないというのだ。だから、費用もかからない行政で対応しろ、行政機関が調停を開いてそこで合意すれば解決するし、合意できなくても、普通の行政事件のように行政不服訴訟とか裁判はできず、単に会社に損害賠償請求ができるのみというわけである。

せめて、発達障害についての正しい知識、理解が職場に拡がるように、セクハラ等のように社内研修を充実させてほしい。中途半端に障害者、特に発達障害のことを出すのは、かえって誤解を招き、障害者差別を助長するだけである。